神田さんのメール(備忘録)

ボクのスタンスはセカンドライフの擁護派となるとおもいますが(笑)、
この数字は、いかにセカンドライフが、
「興味があり、敷居が高く、リピーターとなりにくい」という実情を
見ごとに物語っていると思います。

実際にログインしている人口も全世界をあわせて一桁万人ですから、他の
ネットコミュニティやSNS、オンラインゲームやIRC、チャットと比較すると、
広告メディアとしての価値は非常に低いと思います。

なのになぜか、企業の注目度だけは異常に高い。

さらに、セカンドライフは、高スペックなグラフィックカードに、ネットワーク
環境を要求し、一番の高い要求は、なんといっても、
机に向かってセカンドライフができる自由な時間を持っている人かもしれません。

自分のアバターをいじりだすだけで軽く1時間、テレポートしてチャットを
しているとあっという間に1時間。自分でオブジェクトなどを作りだすと軽く
3時間というのがザラな世界です。気がつくと半日も、セカンドライフの空間で
過していたという日があります。
この世界感でビジネスマンが企業向けのマネタイズを考えられるわけがありませ
んね。

むしろ、机とイスに座って、ネットアクセスに時間を注ぐことが
できる「ネット可処分時間」をたくさん持っている人とのほうが
セカンドライフは相性がいいようです。

そして、そこまで滞在した人たちにのみ見えてくるセカンドライフの世界感、
いや人類がはじめて経験する「ユーザー醸成型の仮想空間」があるような気が
してきました。

どちらかというと、ビジネスであくせくしながら、どうビジネスになるのか?を
検討しながら参入すると、何も見えてこない世界ではないでしょうか?

ビジネスの場ではなく、遊び、過ごすための空間だからかもしれません。
ビジネスユーザーが増えれば増えるほど、つまらない空間が増えているのも
また現実です。

また、当初のウェブサイトも多々ある個人ホームページのユニークな活動が
魅力であり、そこにビジネスサイトが登場していった経緯があります。

ダイヤルアップでネットにアクセスしている時と、今の常時アクセスとでは、
ネットの使い方もちがいますよね。携帯もパケ放題になることによって、
使い方が大きく変わりました。
セカンドライフは、そのアクセスする敷居が恐ろしく高いでけなのかもしれませ
ん。
今の「セカンドライフバブル」は異常だと思いますが、それなりに新たな経験も
もたらせてくれていると思います。

セカンドライフは、まだまだプリミティブな領域ですが、3Dという仮想空間の
表現手法だけではなく、新たな「仮想世界の感覚」というメタバース独特の感覚
も感じさせてくれています。

当然、セカンドライフだけでなく、WiiGoogleなどもメタバース業界に参入し
てくることでしょう。そうやってメタバースの選択機会が増えることによって、
技術的な敷居は当然、低くなると思います。そこからが本当のビジネスが見えて
くるのではないでしょうか?

ちょうど、いまは、ウェブ1.0時代の「ビジネスモデル特許」に狂騒していたこ
ろに酷似しています。儲かったのは、弁理士さんだけみたいな(笑)。乗り遅れ
ると大変なことになるに日本の企業は過敏になりすぎです。

ボクが体験しているセカンドライフの一番のだいごみは、仮想空間の体験も、
いつしか自分の実経験のように感じはじめてきていることです。

こうやってメールを打ちながらも、となりのPCでは、セカンドライフ内の
契約しているホテルのプライベートビーチで、ボサノバを聞きながら、
きれいな美女にマッサージしてもらいながら、日光浴をしています。

これだけで暑い日本の部屋で仕事しながらも、電脳社会ではリラックスできると
いう変な感覚を体験しています。今までのネットでは得られなかった新しい感覚
です。
今年は一度も海にいっていませんが、何度も南国に旅行している気分なのです。
旅行会社には申し訳ありませんが…。

PCが2台あるだけで、リアルなネットとバーチャルなネットに、心と体を分岐さ
せて存在させることができました。

また、リアルな現金をリンデンドルに変えることによって、
「世界で一番物価と人件費の安い仮想世界」で生活ができるようになりました。

ボクのボイスチャットのフランス語の家庭教師は、10リンデン(日本円で5円く
らい)で1時間もフランス語会話につきあってくれます。
まもなく、1000万人時代を迎えるセカンドライフの世界では、
大半の人がお金をもっていません。だから、10リンデンでも、セカンドライフ
世界では200倍くらい(1000円)の価値を持っているのではないでしょうか?
だから、1万円を20000リンデンに変えるだけで、200万円くらいお小遣いがある
ような計算ができます。
セカンドライフにログインしている間は、別に衣食住に困るわけではないのです
が、人間らしく生きたくなります。
ハンサムにもなれるし、性転換もできるし、リアルでは不可能なことも可能です。
しかし、大半の人は、自分より少しかっこよく美化した程度でおさまるのもユニー
クな現象です(笑)
ちょっとりりしくなったアバターでいろんな旅をして、経験することによって、
いろんなことを学習し、経験することができます。
日本よりも世界の変な場所にいったほうが、本当は面白いことが経験できます。

また。今までの経済では、ちょっと考えられないようなデフレが進んでいます。
経済でいうところのデフレというよりも、ボランタリー感覚に近いところでの、
投げ銭」によるアバター同士のコミュニケーションがあります。

文字や写真ではなく、そこにログインしている「人物」と、気軽にしゃべること
ができる。その場所そのものが、コンテクスト的な文脈つながりであり、そこに
時間を同期して、存在することによって、ある程度の興味を共有できるアバター
同士という関係性が成立します。

これは、いままでのウェブサイトやコミュニティ、のような一対多や、SNSとは
ちがった、地縁や知人ではなく、「他対多のコンテンツ共有」の世界があると
思うのです。この仮想空間でのビジネスは何か発生しそうだという感覚は、ボク
にはとても感じられます。
サービスに参入するだけでなく、携帯型のデバイスや、行動録画装置や、
フィルタリングや、自分のアバターによる情報収集や、RSSリーダー機能など…

ここでは、誰もが自由に他人に声をかけることが許され、シカトも自由だし、
対応してもいいし、いろんな体験が、自分の部屋の中から世界中に、繰り広げら
れます。少し残念なのは、今までのネットと同じように、
「日本語化による言語による鎖国」が生じていることです。
時差も場所も越えられますが、言語の壁による障壁は大きいです。
メタバースの世界でも、日本は、ガラパゴス的な独自の進化をとげそうです(笑)。

現在、企業がセカンドライフに参入するときに、どんな建物を立てるのか?とい
うこと
ばかりに注意が向いているようですすが、初期のネットと一緒で、ウェブのデザ
インばかりに頭がいってしまっていることと同じ問題をかかえています。

建物って一度いけばもう納得しますが、そこにリピーターで来るためには、
何よりも人、いやアバターの対応が必要かと思います。

実際の店舗と同様で、店員さんがいてほしいのです。ECはセルフサービスですが、
セカンドライフでは、対面販売が理想です。リアルなものを販売してもいいわけ
ですから。ECのサポートも可能でしょう。

仮想空間で生活するゆとりのある企業が、これからの
メタバースビジネスで何が起きるのかを体感できるのではと思います。
そう考えると、明日のメシのタネにすぐにしたい企業では、なかなか難しいのか
もしれません。

むしろ、ネット可処分時間のある個人たちが、ユニークなものを企画し、創造し
、それを企業がサポートし、潜在する顧客を集め、自らの顧客も誘引し、コミュ
ニティ化していくことのほうが、仮想空間のコミュニティとしては意味があると思います。

従来の広告効果として換算させるよりも、企業の仮想の島の住人として、一緒に
暮らしていくという感覚が必要かもしれません。企業のブランドコミュニティや
製品コミュニティなど、ユーザー同士が好きな製品やサービスについていろんな
働きかけをおこない、新たな製品のユニークな情報交換などができ、それをオブ
ジェクトやアバター自身で「可視化」することができるというベネフィットを
持っています。

企業が建物建築ではなく、製品やサービスについていろいろとユーザーの声や、
使い方のアイデアやハックをフィードバックしてもらうなどの、いろんなコミュ
ニケーションが本当は可能なのではないでしょうか?

参入しただけで、プレスリリースにとりあげてもらえるのは、あと数か月の命か
と思います。

セカンドライフなどのメタバースの魅力を煽るわけではないですが、
メディアの過剰反応ぶりは、持ち上げるだけ持ち上げて、反対に今度は、手のひ
らをひるがえして、不必要な情報で卑下してくるような状態です。

セカンドライフもデビューからすでに8年も経て、ようやく、昨年から急増し変
化した世界です。ボクも昨年の登録してから、一年を経て、「一歳」となって、
ようやくなんとなくメタバースの過ごし方が見えてきたような気がします。

メタバースの創世記の時代をゆっくり、たのしみながら、ネット可処分時間を
もっと楽しく、便利で、有意義なものに変えていくには、まだもう少し時間が
かかるのかもしれませんね。